【有給は「年5日しか取れない」は間違い】会社に断られる?退職前に全部使える?働く人が知っておきたい7つのルール

人事・労務

「有給って年5日までなんですよね?」

「忙しい時期だから有給は無理と言われた」

「パートだから有給はないと思っていた」

「退職するときに残っている有給を全部使いたい」

有給休暇について、働いている人からすると意外と分からないことが多いのではないでしょうか。

2026年10月は、厚生労働省が毎年実施している「年次有給休暇取得促進期間」です。

厚生労働省によると、2024年の年次有給休暇取得率は66.9%で過去最高となりました。一方、政府は2028年までに取得率70%を目標としており、まだ目標には届いていません。 厚生労働省

そこで今回は会社側ではなく、**働く人の立場から「有給休暇で知っておきたいこと」**を整理します。

1.「年5日しか有給を取れない」は間違い

最初に、かなり多い誤解です。

「会社は年5日有給を取らせればいい」

というルールを、

「従業員は年5日しか有給を取れない」

と勘違いしてはいけません。

年5日というのは、有給休暇が10日以上付与される労働者について、会社が少なくとも年5日は取得させなければならないというルールです。 働き方・休み方改善ポータルサイト

たとえば入社から6か月が経過し、出勤率などの条件を満たした一般的な労働者には、10日の年次有給休暇が付与されます。

その人がすでに5日取得したからといって、

「今年はもう有給を使えません」

となるわけではありません。

残っている有給についても取得できます。

つまり、

「5日」は上限ではなく、会社側に課せられている最低取得ライン

と考えた方が分かりやすいでしょう。

2.パート・アルバイトでも有給はある

「正社員じゃないから有給はない」

これも誤解です。

年次有給休暇は正社員だけの制度ではありません。

パート、アルバイト、契約社員、シフト勤務などでも、法律上の条件を満たせば有給休暇は付与されます。

原則として、6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば対象になります。

勤務日数が少ないパート・アルバイトの場合には、週の所定労働日数などに応じて有給の日数が決まる「比例付与」という仕組みがあります。 厚生労働省

たとえば「週2日しか働いていないから有給はゼロ」とは限りません。

自分に何日付与されているか分からなければ、一度給与システムや勤怠システム、会社の担当者に確認してみる価値があります。

3.有給を取る理由は「旅行」でもいい

「体調不良なら有給を使えるけど、旅行ではダメ」

と思っている人もいるかもしれません。

しかし、年次有給休暇の利用目的は原則として労働者の自由です。

休養でも、旅行でも、趣味でも、家族との時間でも構いません。

厚生労働省も、年休について「休養のためでもレジャーのためでも利用目的を問わず取得できる」としています。 厚生労働省

もちろん会社には有給申請の手続きがありますから、「○日前までに申請する」など、就業規則上の手続きは確認した方がよいでしょう。

ただし、

「旅行だから有給は認めません」

というように、利用目的だけを理由として拒否するものではありません。

4.「人手不足だから有給禁止」はいつでも通るわけではない

ここは少し複雑です。

原則として、有給休暇をいつ取得するかは労働者が指定します。

ただし、その日に有給を取得させることで「事業の正常な運営を妨げる」場合には、会社が別の時季へ変更する「時季変更権」が認められています。 労働条件確認サイト

だから、

「会社は絶対に有給を断れない」

という説明も正確ではありません。

一方で、

「忙しいから」

「人手不足だから」

という理由だけで、いつでも有給を拒否できるわけでもありません。

厚生労働省が運営する雇用労働相談センターの資料でも、単に「仕事が忙しい」「人手不足」という程度だけでは時季変更権を行使できないと説明されています。 国家戦略特区 関西圏雇用労働相談センター

事業規模、業務内容、その日の繁閑、代替要員を配置できるかなどを含め、個別に判断される問題です。

5.「休まれると困る」と言われたらどう考える?

私はこれまで人事や採用、現場の運営にも関わってきました。

その中で、有給休暇について制度以上に難しいと感じたのが、職場の空気です。

「制度上は取れるけれど、周りが取っていない」

「自分が休むと同僚が大変になる」

「管理者から嫌な顔をされそう」

こうした理由で、有給が残っていても取得しない人はいます。

特に介護やサービス業など、毎日の必要人員が決まっている職場では、誰か一人が休むことで現場の負担が増えることもあります。

ただ、それをすべて

「休む従業員の責任」

にしてしまうのは少し違います。

従業員には休暇を取得する権利があり、会社側には誰かが休んでも業務を回せるよう、人員配置や業務分担を考える役割があります。

もちろん、同じ日に何人も休めば調整が必要になることはあります。

だからこそ、

「有給を取るな」ではなく、「どうすれば休めるか」を調整できる職場か

という視点も、働く会社を見る一つの材料になると思います。

6.時間単位の有給は、どの会社でも使えるわけではない

「病院に行くので2時間だけ有給にしたい」

「子どもの学校行事に参加して午後から出勤したい」

そんなとき便利なのが時間単位有給です。

ただし、すべての会社で自動的に利用できる制度ではありません。

時間単位年休を導入するには労使協定が必要で、利用できるのは年5日分までです。 働き方・休み方改善ポータルサイト

さらに少しややこしいのですが、時間単位で取得した有給は、会社に義務付けられている「年5日の確実な取得」には算入されません。 働き方・休み方改善ポータルサイト

時間単位有給を使えるかどうかは、勤務先の就業規則などを確認してみましょう。

7.退職前に残っている有給を全部使える?

転職や退職のときに非常に多い疑問です。

「有給が15日残っています。最終出勤日の後、全部有給にして退職できますか?」

原則として、退職日までに残っている所定労働日について有給を請求することは可能です。

通常であれば会社には時季変更権がありますが、退職日が決まっている場合には、変更する先の日がありません。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも、退職直前に残存年休を使い切る申請について、退職後へ変更できないため会社は時季変更権を行使できないと解説しています。 労働条件確認サイト

ただし、退職日を過ぎれば残った有給休暇の権利は消滅します。

また、

「使わなかった有給を全部お金で買い取ってください」

と会社に請求できる制度が法律上当然にあるわけではありません。退職に伴って消滅する有給の買い取りを会社に義務付ける規定はありません。 都道府県労働局所在地一覧

退職時に有給を消化したい場合は、退職日ぎりぎりではなく、引き継ぎ期間も含めて早めに会社と調整しておく方が現実的です。

有給は「会社にお願いしてもらう休み」ではない

有給休暇について調べていると、

「上司が許可してくれない」

「有給を使ったら嫌味を言われた」

「パートだから有給はないと言われた」

という悩みを目にします。

もちろん、実際の職場では業務との調整が必要です。

しかし、有給休暇は会社が福利厚生として好意で与えているものではありません。

労働基準法で定められた労働者の権利です。

2024年の有給取得率は過去最高の66.9%まで上がりましたが、それでも付与された有給の約3分の1は取得されていない計算になります。 厚生労働省

まずは自分に、

「何日付与されているのか」

「何日残っているのか」

「いつ失効するのか」

を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。

有給を使うかどうかを決める前に、自分が持っている権利を知っておくこと。

それだけでも、働き方の選択肢は少し増えると思います。


参考資料

厚生労働省「10月は『年次有給休暇取得促進期間』です」
厚生労働省「確かめよう労働条件 年次有給休暇」
厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」
各都道府県労働局「年次有給休暇に関するQ&A」

※本記事は一般的な労働法制についての情報提供を目的としています。実際の適用は勤務状況や就業規則などによって異なる場合があります。個別のトラブルについては、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、専門家などへご相談ください。

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