「今年、有給を5日も使っていない」
「会社から有給を取るように言われたことがない」
「忙しいから有給は取れないと言われている」
そんな人にとって、少し気になるニュースが出ています。
2026年10月12日付の労働新聞は、高松労働基準監督署が、従業員に年次有給休暇を取得させなかったとして、会社側を書類送検した事案を報じています。労働新聞社Webサイト
別の報道によると、高松労基署は9月24日、高松市の小売会社の社長を、従業員1人に法律で定められた年5日の有給休暇を取得させなかった疑いで、高松地検へ書類送検しました。
対象とされたのは、2024年7月からの1年間と、その後2025年7月から会社の破産手続が始まった2026年1月までの期間とされています。退職代行「ローキ(労働基準調査組合)」
ここで気になるのが、
「有給を5日取らせないだけで、本当に法律違反になるの?」
ということではないでしょうか。
結論からいうと、対象となる労働者に年5日の有給休暇を取得させることは、会社の努力目標ではなく法律上の義務です。
ただし、「5日」という数字には誤解も多いため、働く側から分かりやすく整理します。
有給の「年5日」は何のルール?
2019年4月から、会社は年間10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、1年間に5日以上の有給を確実に取得させることが義務付けられています。
厚生労働省も、年10日以上の有給が付与されるすべての労働者について、毎年5日間を確実に取得させなければならないと案内しています。働き方・休み方改善ポータルサイト
ここで重要なのは、
「会社が5日までしか認めなくていい」という制度ではない
ということです。
たとえば、有給が20日残っている人が、
「会社から5日取らされたから、残り15日は使えない」
となるわけではありません。
5日はあくまで、会社が最低限確実に取得させなければならない日数です。
自分で5日取っていたらどうなる?
会社が必ず、
「○月○日に休んでください」
と5日分指定しなければならないわけではありません。
自分から有給を申請してすでに5日取得していれば、その5日分について会社が改めて時季指定をする必要はありません。
また、計画年休で取得した日も一定の場合には5日に含まれます。
つまり会社に求められているのは、
最終的に対象となる労働者が1年間に5日以上有給を取得している状態にすること
です。厚生労働省
「忙しくて取れなかった」でも会社の義務はなくならない
働いている側からすると、
「申請していない自分も悪いのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、この年5日のルールについては少し違います。
労働者本人から有給申請がなかったとしても、会社は取得状況を確認し、5日に足りなければ本人の意見を聞いたうえで時季を指定するなどして、取得させる必要があります。
つまり、
「本人が有給を取りたいと言わなかったのでゼロ日でした」
では、会社側の義務を果たしたことにはなりません。
今回報じられた事案も、会社側がこの時季指定を行わず、必要な日数を取得させなかった疑いが持たれています。労働新聞社Webサイト
本当に罰則がある
「有給5日は会社の努力義務」
と思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。
厚生労働省によると、年5日の有給を取得させなかった場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象となることがあります。働き方・休み方改善ポータルサイト
さらに、この違反は対象となる労働者1人ごとに扱われます。
ただし、違反が見つかった会社がすべて直ちに刑事処分されるという意味ではありません。
厚生労働省は、労働基準監督署の監督指導では原則として、まず是正に向けて指導し改善を図るとしています。働き方・休み方改善ポータルサイト
今回のような書類送検は、
「有給5日取得義務は形だけの制度ではない」
ことが分かる事例だといえます。
なお、「書類送検」は検察へ事件を送る手続きであり、この時点で有罪が確定したという意味ではありません。
「有給を5日取れていない=会社が即違法」とも限らない
ここも注意が必要です。
たとえば、今年の有給付与日が4月1日なら、会社が5日を取得させなければならない期間は翌年3月31日までです。
10月時点でまだ3日しか使っていなくても、残りの期間に2日取得すれば義務を満たします。
そのため、
「今年まだ5日休んでいない!」
というだけで、直ちに違法とは判断できません。
確認すべきなのは、
自分の有給がいつ付与されたか
です。
会社によっては入社日から6か月後ではなく、全社員の付与日を統一している場合もあります。
勤怠システムや給与明細などで「有給付与日」「残日数」を一度確認してみるといいでしょう。
パート・アルバイトも対象になる?
パートやアルバイトでも対象になる場合があります。
厚生労働省は、正社員・パート・シフト制といった名称に関係なく、一定条件を満たせば年次有給休暇が付与されるとしています。働き方・休み方改善ポータルサイト
そして、比例付与を含めて年間10日以上の有給が付与される労働者については、年5日の取得義務の対象になります。
たとえば週4日勤務のパートでも、勤続年数が長くなれば年間10日以上付与される場合があります。
「私はパートだから5日ルールは関係ない」
とは限りません。
もし1年以上、5日も有給を取れていなかったら?
まず確認してほしいのは、
「有給が使えなかった」のか、「自分が使わなかった」のか
だけではありません。
会社には5日を確実に取得させる義務があるため、
・有給の付与日
・付与された日数
・実際に取得した日数
・勤怠記録
・会社から時季指定があったか
を確認します。
自分の有給残日数が分からなければ、会社の人事・総務などへ確認して構いません。
それでも、
「有給はうちにはない」
「人手不足だから使わせない」
などと言われ、明らかに制度そのものを認めてもらえない場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談する方法があります。
「人が足りないから休めない」は働く人だけの問題ではない
私はこれまで、介護事業所の管理や人事・採用にも関わってきました。
現場にいたとき、
「今日1人休まれると本当に厳しい」
という状況があることも経験しています。
特に介護やサービス業のように、その日に必要な人数がある程度決まっている仕事では、1人の休みが別のスタッフの負担になることもあります。
だから、管理する側が
「できれば今日は出てほしい」
と思う場面自体はあります。
しかし、
「人手不足だから有給を取らせない」ことと、「取得日を調整する」ことは別です。
誰かが休んでも職場が回るように採用する。
シフトを組む。
業務を分担する。
これは本来、働く本人だけが背負う問題ではありません。
有給を取るたびに、
「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」
と従業員が思わなければならない職場になっているなら、人員配置そのものを考える必要があると思います。
年5日は「目標」ではなく最低ライン
昨日の記事でも紹介しましたが、年5日の有給取得義務は、
「5日休めれば十分」
という制度ではありません。
厚生労働省も「年5日はあくまで最低限の基準」としています。働き方・休み方改善ポータルサイト
有給が15日ある人なら、残り10日についても当然取得する権利があります。
今回の書類送検報道から働く側が知っておきたいのは、
「社長が送検された」
というインパクトのある部分だけではありません。
自分が、
何日の有給を持っているのか。
今年何日使ったのか。
いつまでに使えるのか。
まず、そこを知っておくことです。
会社が教えてくれるのを待つだけではなく、自分の勤怠画面を一度確認してみる。
今回のニュースを、自分の有給休暇について確認するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
・労働新聞「年休取得させず送検 1年半時季指定を怠る 高松労基署」(2026年10月12日号) 労働新聞社Webサイト
・厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」 働き方・休み方改善ポータルサイト
・厚生労働省「休み方に関するマニュアル」 働き方・休み方改善ポータルサイト
・厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」 厚生労働省
・労働基準法第39条、第120条 厚生労働省
※本記事は一般的な労働法制の情報提供を目的としています。書類送検は有罪判決を意味するものではありません。また、個別の有給休暇の取り扱いは付与日や勤務状況などによって異なるため、具体的なトラブルについては労働基準監督署、総合労働相談コーナー、専門家等へご相談ください。


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