「これってハラスメントなのかな?」
職場で嫌なことがあったとき、そう感じたことがある人もいるかもしれません。
パワハラ、セクハラ、カスハラ、マタハラ、スメハラ……。
最近では、本当にたくさんの「○○ハラ」という言葉を耳にします。
では、そもそもハラスメントとは何なのでしょうか。
そして、日本には一体何種類のハラスメントがあるのでしょうか。
今回は、職場でよく聞くハラスメントについて、できるだけ分かりやすく整理してみます。
そもそもハラスメントとは?
ハラスメント(harassment)は、嫌がらせや相手を困らせる行為などを意味する言葉です。
職場では、相手に精神的・身体的な苦痛を与えたり、働く環境を悪化させたりする言動について使われます。
ただし、大切なのは、
「○○ハラスメントという名前が付いている=すべて法律で定義されている」
というわけではないことです。
法律や厚生労働省の指針で具体的に定められているものもあれば、社会の中で問題を分かりやすく表現するために生まれた言葉もあります。
「○○ハラ」は全部で何種類ある?
実は、
「日本にはハラスメントが全部で○種類あります」
という正式な答えはありません。
「スメハラ」「アルハラ」など、社会の中で新しい呼び方が生まれるためです。
民間のサイトなどでは「50種類以上」「100種類近く」と整理されていることもありますが、国が認定したハラスメントが50種類、100種類あるという意味ではありません。
つまり、
○○ハラの総数には公式な数はない
と考えるのが一番分かりやすいです。
厚生労働省が扱っているハラスメントは?
ここは「世間で使われている○○ハラ」と分けて考える必要があります。
2026年9月現在、厚生労働省が職場のハラスメント防止対策の中心として扱っているのは、大きく次の3領域です。
① パワーハラスメント
② セクシュアルハラスメント
③ 妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント
これらについては、事業主に防止措置などが求められています。厚生労働省
さらに、2026年10月1日から
④ カスタマーハラスメント
⑤ 求職者等に対するセクシュアルハラスメント
についても、事業主に防止措置を講じることが義務化されます。厚生労働省
そのため、2026年10月以降は、厚生労働省の職場のハラスメント対策を説明するときには、主要な5つの領域として整理すると分かりやすいでしょう。
ただし、「法律上正式なハラスメントが全部で5種類」という意味ではありません。
ハラスメントって日本だけのもの?
いいえ。
ハラスメントそのものは、日本だけの問題ではありません。
英語でも「sexual harassment」「workplace harassment」などの言葉が使われ、職場における嫌がらせや暴力は世界各国で問題になっています。
ただ、日本では、
パワハラ
マタハラ
カスハラ
スメハラ
アルハラ
のように、
「○○ハラスメント」→「○○ハラ」
と略して、問題ごとに細かく名前を付ける傾向があります。
そのため、日本では「ハラスメントの種類がものすごく多い」と感じやすいのかもしれません。
パワーハラスメント(パワハラ)
職場でよく聞くハラスメントの代表的なものです。
例えば、
- 人格を否定するような暴言
- 必要以上に長時間叱責する
- 大勢の前で繰り返し怒鳴る
- 明らかに無理な仕事を押しつける
- 仕事を与えず孤立させる
- 私生活に過度に立ち入る
などが問題になることがあります。
一方で、仕事上必要な注意や指導がすべてパワハラになるわけではありません。
厚生労働省では、パワハラの代表例を「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6類型に整理しています。厚生労働省
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
性的な言動によって相手に不利益を与えたり、職場環境を悪化させたりするものです。
例えば、
- 容姿や身体について繰り返し発言する
- 性生活や恋愛について必要以上に聞く
- 性的な冗談を繰り返す
- 相手が嫌がっているのに身体に触れる
などがあります。
「冗談のつもりだったから大丈夫」ということではありません。
男女どちらも被害者・行為者になり得ますし、同性間でもセクハラに該当する場合があります。厚生労働省
妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント
一般的には「マタハラ」「パタハラ」などと呼ばれることがあります。
例えば、
「妊娠するなら辞めてほしい」
「育休を取るなら昇進は難しい」
など、妊娠・出産や育児・介護休業等の制度利用に関する言動によって就業環境を害するものなどが対象になります。厚生労働省
カスタマーハラスメント(カスハラ)
顧客や利用者、取引先などから働く人に対して行われる著しい迷惑行為です。
例えば、
- 長時間拘束する
- 暴言や威圧を繰り返す
- 土下座を要求する
- 社会通念を超えた要求をする
などが考えられます。
そしてカスハラについては、2026年10月1日から企業の防止対策が義務化されます。厚生労働省
「お客様だから何を言われても我慢する」という時代ではなくなってきています。
求職者等に対するセクシュアルハラスメント
採用面接、インターンシップ、OB・OG訪問など、就職活動をする人に対する性的な言動も問題になります。
例えば、
- 不必要に恋愛や性的な質問をする
- 個人的な食事へ執拗に誘う
- 採用する立場を利用して不適切な要求をする
などです。
こちらも2026年10月1日から事業主の防止措置が義務化されます。厚生労働省
モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度によって相手を精神的に追い詰める行為を指して使われます。
無視する、人格を否定する、相手の自信を失わせる発言を繰り返すなどです。
職場だけでなく、夫婦や家族などの関係でも使われる言葉です。
ただし「モラハラ」という名称そのものを、パワハラのように法律が独立した制度として定義しているわけではありません。
SOGIハラスメント
性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関する差別的な言動などについて使われる言葉です。
本人の同意なく、性的指向や性自認を周囲に明かす「アウティング」なども大きな問題になります。
アルコールハラスメント(アルハラ)
飲酒に関する嫌がらせや強要などを指します。
「一杯くらい飲め」
「飲めないと付き合いが悪い」
などと、本人が望まない飲酒を強要する行為などです。
飲酒できる量や体質は、人によって大きく異なります。
スメルハラスメント(スメハラ)
体臭、香水、柔軟剤、たばこなどの「におい」によって周囲が不快感を感じる問題について使われる言葉です。
ただし、スメハラは法律上明確に定義されたハラスメントの名称ではありません。
特に体臭など本人が気付きにくい問題については、
「スメハラだから改善してください」
と一方的に責めるのではなく、本人の尊厳に配慮した伝え方が必要です。
「○○ハラ」という名前だけで判断しない
ハラスメントという言葉が広く知られるようになったこと自体は、職場環境を考えるうえで大切な変化だと思います。
一方で、
「注意されたからパワハラ」
「嫌な気持ちになったから○○ハラ」
と、名前だけで判断するのも適切ではありません。
反対に、
「こんなの昔は普通だった」
「みんな我慢している」
と軽く扱うのも問題です。
大切なのは、
何があったのか
どのような状況だったのか
どの程度繰り返されたのか
業務上の必要性があったのか
相手の就業環境にどのような影響を与えたのか
などを整理して考えることだと思います。
ハラスメントかもしれないと思ったら
「これっておかしいのかな?」
と思ったときは、まず記録を残しておくことも大切です。
例えば、
- 日時
- 場所
- 誰から言われたか
- 何を言われた・されたか
- 周囲に誰がいたか
- メールやLINE、社内チャットなどの記録
です。
会社の相談窓口へ相談する方法もあります。
社内では相談しにくい場合には、労働局の総合労働相談コーナーなど、外部の相談窓口を利用する選択肢もあります。
まとめ
「○○ハラ」という言葉には、正式な総数はありません。
世間では50種類以上ともいわれますが、そのすべてが法律で定義されたハラスメントというわけではありません。
2026年9月現在、厚生労働省が職場のハラスメント防止対策の中心として扱っているのは、
パワハラ
セクハラ
妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント
です。
そして2026年10月1日から、
カスハラ
求職者等に対するセクハラ
についても企業の防止措置が義務化されます。厚生労働省
大切なのは、「○○ハラ」という名前をたくさん覚えることではなく、
相手の尊厳を傷つけていないか。
安心して働ける環境になっているか。
困ったときに相談できる場所があるか。
を考えることなのではないでしょうか。
今後こときゅうでは、
「指導とパワハラの違い」
「カスハラとは?」
「スメハラを本人にどう伝える?」
「ハラスメントを受けたとき何を記録する?」
「会社がハラスメント相談を受けたらどうする?」
なども、一つずつ取り上げていきます。


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