「年末調整って、去年と同じように書けばいいんでしょ?」
毎年会社から渡される書類を見て、そう思っている人も多いのではないでしょうか。
名前を書く。
家族を書く。
生命保険の控除証明書を出す。
去年の書類を見ながら同じように入力する。
年末調整は毎年行うものなので、どうしても「去年と同じ作業」になりがちです。
ところが、2026年の年末調整は昨年と同じではありません。
国税庁によると、2026年分では、
・基礎控除の引き上げ
・給与所得控除の最低保障額の引き上げ
・扶養親族などの所得要件の変更
・23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例
などが行われています。
しかも、これらの改正は原則として2026年12月1日から施行され、2026年分の所得税に適用されます。
11月まで毎月の給与から引かれている所得税は従来のルールのまま。
その差を12月の年末調整で計算し直す仕組みです。
つまり今年は、
「会社に任せておけばいい」ではなく、自分が使える控除を一度確認しておいた方がいい年
だと思います。
今回は会社の経理担当者向けではなく、年末調整を提出する普通の会社員・パート・アルバイトの立場から、特に確認したいポイントを整理します。
そもそも年末調整って何をしている?
毎月の給与明細を見ると、
「所得税」
という項目で税金が引かれています。
ただし、この金額はその人の最終的な年間所得税額ではありません。
毎月は一定のルールで仮の金額を会社が給与から差し引いています。
年末になって、
1年間の給与
家族の状況
生命保険料
社会保険料
住宅ローン控除など
を確認し、
「本当は1年間で所得税をいくら払うべきだったのか」
を計算し直します。
すでに引かれていた税金の方が多ければ還付。
足りなければ追加で徴収されます。
国税庁も、年間の税額と実際に源泉徴収した税額を比較し、払い過ぎなら還付し、不足していれば徴収すると説明しています。
だから、
「年末調整=必ずお金が戻ってくる」
という制度ではありません。
1.基礎控除が最大104万円に
今年まず変わるのが「基礎控除」です。
基礎控除とは、所得税を計算するときに所得から差し引くことができる控除です。
2026年分では見直しが行われ、所得金額に応じて最大104万円の基礎控除が適用されます。
控除額が大きくなれば、その分だけ所得税の対象になる金額が小さくなる可能性があります。
ここで、
「じゃあ104万円そのまま税金が安くなるの?」
と思うかもしれません。
そうではありません。
104万円は「税額」ではなく、所得から差し引く金額です。
実際に税金がいくら変わるかは、その人の年収や他の控除によって違います。
2.給与所得控除の最低保障額も74万円へ
会社員には、実際の仕事の経費を一つずつ申告する代わりのような仕組みとして「給与所得控除」があります。
2026年分・2027年分について、給与収入220万円までの場合の給与所得控除額は74万円となりました。
これも所得税を計算するときに重要です。
たとえば給与収入から給与所得控除を引き、
さらに基礎控除や扶養控除、生命保険料控除などを引いた残りが、所得税計算の基礎になります。
そのため今年は、
「毎年同じくらいの年収だから税金も同じくらいだろう」
とは限りません。
「178万円の壁」は所得税の話
この2つの改正によって、2026年分では給与収入のみの場合、所得税がかかり始める目安として178万円という数字が注目されています。
ただし、ここは注意してください。
178万円は「所得税」の話です。
社会保険の扶養や社会保険加入条件とは別の制度です。
以前の記事で紹介した「106万円の壁」や「130万円の壁」と混同しないようにした方がいいでしょう。
「178万円まで全部扶養で働ける」
という意味ではありません。
3.家族の給与収入「123万円以下」から「136万円以下」へ
家族を扶養に入れている人は、今年ここを特に確認した方がいいです。
2026年分から、扶養親族や同一生計配偶者などの所得要件が変わります。
給与収入だけの場合、扶養親族などの収入の目安は、
123万円以下
↓
136万円以下
へ引き上げられました。
たとえば、
「子どもがアルバイトをしている」
「配偶者がパートで働いている」
という家庭では、去年と同じ基準で、
「今年は扶養から外れる」
と思い込まない方がいい場合があります。
逆に、
「去年大丈夫だったから今年も大丈夫」
とも限りません。
年末調整をするときには、家族が今年いくら稼ぐ見込みなのか確認する必要があります。
「今年の年収なんて10月には分からない」
ここで困るのが、
「まだ11月と12月の給与をもらっていないのに、今年の年収なんて分からない」
という問題です。
これは年末調整で多くの人が迷うところだと思います。
実際、申告書には「本年中の合計所得金額の見積額」を記載する項目があります。
つまり、年末までの給与が確定していない段階では、見込み額を計算して記載することになります。
給与明細や現在の月給、予定されている賞与などを確認して、ある程度の年収を見積もります。
最近の年末調整解説記事でも、この「収入」と「所得」の計算が最も迷いやすいポイントの一つとして詳しく扱われています。
4.23歳未満の子がいる家庭は生命保険料控除を確認
今年もう一つ大きく変わるのが生命保険料控除です。
2026年分から、23歳未満の扶養親族がいる人について、新生命保険料の控除額の特例が設けられました。
一般の新生命保険料控除は通常最高4万円ですが、条件を満たす場合は最高6万円となります。
対象になる家庭は、
「去年と同じ保険だから去年の書類をそのまま参考にする」
ではなく、今年の申告書をきちんと確認した方がいいでしょう。
なお、生命保険料控除全体の適用限度額は12万円です。
年末調整で会社員が用意しておきたいもの
年末調整の時期になって、
「書類どこだっけ?」
と探し始める人もいると思います。
今のうちに、自分に関係するものを確認しておくと楽です。
代表的なのは、
生命保険料控除証明書。
地震保険料控除証明書。
iDeCoなどの掛金証明書。
自分で支払った国民年金などの証明書。
住宅ローン控除に必要な書類。
年の途中で転職した人なら、前の勤務先の源泉徴収票です。
特に年の途中で再就職した場合、前職の給与や源泉徴収税額なども含めて年末調整を行う必要があります。
「会社に言われてから準備する」より、10月のうちに確認しておく方が慌てません。
人事を経験して感じる「年末調整は毎年同じ」の落とし穴
私はこれまで人事・労務にも関わってきました。
年末調整で毎年感じるのは、
「去年と状況が変わっていないから、今年も同じでいい」
と考えてしまいやすいことです。
でも実際には、
結婚した。
離婚した。
子どもがアルバイトを始めた。
子どもの収入が増えた。
生命保険に入った。
iDeCoを始めた。
住宅を購入した。
途中で転職した。
など、その年に起きたことによって控除は変わります。
そして今年は、それに加えて税制そのものも変わっています。
だから2026年は特に、
去年の申告書をただ写すのではなく、
「去年から変わったことはないか?」
を一度考えてから記入することをおすすめします。
「面倒だから何も書かない」はもったいないことも
年末調整の書類は、正直分かりにくいです。
書類の名前も長い。
「収入」と「所得」が違う。
控除という言葉もたくさん出てきます。
だから、
「よく分からないから名前だけ書いて提出しよう」
となる気持ちも分かります。
しかし、本来受けられる控除を申告しなければ、年末調整では反映されないことがあります。
もちろん後から確定申告で対応できるケースもあります。
ただ、
会社で年末調整できるものなら、この段階で正しく申告した方が手間は少なくなります。
今年は「去年のコピー」をやめてみる
2026年の年末調整では、
基礎控除。
給与所得控除。
扶養親族の所得要件。
生命保険料控除。
いくつものルールが変わっています。
国税庁も今年の年末調整について「基礎控除の引上げ等に注意」と明確に案内しています。
今から全部の税金を勉強する必要はありません。
まずは、
①自分の今年の年収見込み
②配偶者や子どもの今年の収入見込み
③今年新しく入った保険やiDeCoなどがないか
④転職や住宅購入など生活の変化がなかったか
この4つだけ確認してみてください。
年末調整は、
「会社から言われたから書く書類」
ではありません。
1年間に払い過ぎた・不足した所得税を、自分の実際の状況に合わせて精算する手続きです。
今年は制度も変わっています。
会社から書類が届いたら去年の書類をコピーする前に、一度だけ、
「2026年は何が変わった?」
と確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」
・国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
・国税庁「給与所得控除」
・国税庁「生命保険料控除」
・国税庁「扶養控除」
・国税庁「特定親族特別控除」
※本記事は2026年10月25日時点の制度をもとにした一般的な情報提供です。控除の適用は本人や家族の所得、年齢、保険契約などによって異なります。具体的な税務判断については勤務先、税務署、税理士などへご確認ください。

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