【正社員と同じ仕事なのに給料が違う…】会社に理由を聞いていい?10月から変わったパート・契約社員のルール

人事・労務

「正社員とほとんど同じ仕事をしているのに、自分だけ時給制」

「正社員にはボーナスがあるのに、パートにはない」

「仕事内容は同じなのに、手当が付かない」

パートや契約社員として働いていると、一度はこんな疑問を感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

2026年10月19日の労働新聞によると、茨城労働局が公表したパートタイム・有期雇用労働法に基づく昨年度の指導状況では、労働条件の文書交付等について96件の是正指導が行われました。

是正指導全体の11.7%を占めています。全国では同項目が23.9%だったとされています。労働新聞社Webサイト

そして、2026年10月1日からはパート・有期雇用労働者に関するルールも変わりました。

その一つが、

「正社員との待遇差について会社に説明を求めることができる」ことを、雇い入れ時などに明示するルール

です。厚生労働省

では、

「正社員と同じ仕事なら、給料も全部同じになるの?」

「ボーナスがパートだけゼロなのは違法?」

「理由を聞いたら契約更新されなくならない?」

今回は、会社側ではなく働く人の立場から整理します。

「同じ仕事なら同じ給料」と単純に決まるわけではない

まず、一番誤解されやすいところです。

「同一労働同一賃金」という言葉だけを見ると、

同じ作業をしているなら、正社員とパートは必ず同じ給料にしなければならない

と思うかもしれません。

実際には、そこまで単純ではありません。

パートタイム・有期雇用労働法では、同じ会社で働く正社員とパート・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。厚生労働省

待遇差を考える際には、

仕事内容

責任の程度

人事異動や転勤など、職務・配置変更の範囲

能力や経験などその他の事情

といったものが関係します。

たとえば、店頭では正社員とパートが同じレジ業務をしていたとしても、

正社員には店舗全体の売上管理がある。

クレームの最終対応をする。

他店舗への転勤がある。

スタッフ教育を担当する。

といった違いがあれば、賃金に差があること自体が直ちに違法とは限りません。

反対に、

「仕事内容も責任もほぼ同じなのに、パートだからという理由だけで待遇が違う」

のであれば、その差の理由を確認する意味があります。

会社に「なぜ給料が違うんですか?」と聞いていい

聞いて大丈夫です。

パートタイム・有期雇用労働者は、正社員との待遇差の内容と、その理由について会社へ説明を求めることができます。

会社は、比較対象となる正社員との待遇の違いや、その待遇差を設けている理由について説明する必要があります。多様な働き方の実現応援サイト

ここでいう「待遇」は基本給だけではありません。

賞与。

手当。

福利厚生。

休暇。

退職手当。

さまざまな待遇が対象になり得ます。

つまり、

「パートだから安いんです」

だけではなく、

なぜその待遇差になっているのか

を説明してもらうことができます。

10月から何が変わったの?

ここは少し注意が必要です。

2026年10月から突然、

「待遇差の理由を聞けるようになった」

わけではありません。

説明を求めることができる制度自体は以前からありました。

今回変わったのは、パート・有期雇用労働者を雇い入れたときや契約を更新するときに、

「正社員との待遇差について説明を求めることができます」

ということ自体を、会社が明示しなければならなくなった点です。厚生労働省

これまでは、

「そんなこと会社に聞いていいなんて知らなかった」

という人も少なくなかったと思います。

今回の改正は、その権利を働く本人にも分かりやすくする意味があります。

「契約社員」なら全員対象?

「契約社員」という会社内での呼び方だけで決まるわけではありません。

この法律で重要なのは、有期労働契約かどうかです。

たとえば「契約社員」という名称でも無期契約の場合と、1年契約などの有期契約の場合があります。

また、パートタイム労働者については、同じ会社の通常の労働者より週の所定労働時間が短い労働者が対象です。

自分が対象なのか分からなければ、まず雇用契約書や労働条件通知書を確認してみましょう。

正社員だけボーナスあり。これは違法?

これも、

「パートに賞与がない=即違法」

とは言えません。

賞与を何の目的で支給しているのか、その人の仕事や責任が正社員とどう違うのかなどによって判断が変わります。

ただし、2026年10月のガイドライン改正では、賞与や退職手当などについての考え方がさらに詳しく示されました。

厚生労働省は、賞与・退職手当の目的がパート・有期雇用労働者にも当てはまる場合には、正社員との働き方や役割の違いに応じた均衡のとれた支給になっているか確認する必要があるとしています。厚生労働省

つまり、

「正社員じゃないからゼロ」

という説明だけで終わるのではなく、

その賞与は何のために支払われているのか

まで見る必要があります。

家族手当もパートだからゼロとは限らない

今回の改正で分かりやすくなったものの一つが家族手当です。

厚生労働省の改正ガイドラインでは、

契約更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期雇用労働者には、正社員と同一の家族手当を支給しなければならない

という例が示されています。厚生労働省

たとえば、

正社員:配偶者手当1万円

契約社員:0円

となっている場合、

「契約社員だからありません」

だけではなく、その差が本当に合理的なのかを確認する必要があります。

住宅手当も会社の目的によって変わる

住宅手当についても、

「正社員だけだから全部ダメ」

という話ではありません。

たとえば、その住宅手当が、

転居を伴う配置転換がある社員の住宅費負担を補助するため

に支給されているとします。

正社員には全国転勤があり、パートには一切転勤がないのであれば、待遇差に理由がある可能性があります。

一方、パートや有期社員にも正社員と同じように転居を伴う配置変更があるなら、改正ガイドラインでは同一の住宅手当を支給する必要があるとの考え方が示されています。厚生労働省

大事なのは、

「手当がある・ない」だけでなく、その手当が何のためのものなのか

を見ることです。

夏休みや福利厚生にも差がある?

今回のガイドライン改正では、賃金以外についても記載が充実しました。

たとえば、

福利厚生施設

病気休職・休暇

夏季・冬季休暇

永年勤続などの褒賞

などです。厚生労働省

「正社員だけ夏季休暇3日、パートはゼロ」

という制度があったからといって、名称だけで結論を出すことはできません。

しかし、

「昔からそうだから」

「パートだから」

だけでは十分な説明にならない場合があります。

理由を聞いたら契約更新されなくならない?

ここを心配する人は多いと思います。

「そんなことを聞いたら面倒な人だと思われそう」

「次の契約更新で切られるのでは?」

と考えて、聞けない人もいるでしょう。

しかし、会社が、

待遇差について説明を求めたことを理由として、不利益な取扱いをすることは禁止されています。

厚生労働省も、

「正社員だけにボーナスがある理由を聞いたら、来月から来なくてよいと言われた」

という例について、不利益な取扱いは禁止されていると説明しています。多様な働き方の実現応援サイト

もちろん、契約更新にはさまざまな事情があります。

そのため、

「説明を求めた後に更新されなかった=必ず違法」

とまでは断定できません。

ただ、

「待遇差について質問したことそのもの」を理由に不利益を与えることは認められていない

ということは知っておいていいでしょう。

会社にはどう聞けばいい?

いきなり、

「これ違法ですよね?」

と聞く必要はありません。

むしろ最初は、

正社員との給与や賞与の違いについて確認したいのですが、私の待遇がどのような基準で決まっているのか説明していただけますか?

くらいで十分です。

もう少し具体的に聞くなら、

正社員と担当している業務が近いと感じています。基本給(時給)や賞与に違いがある理由について、仕事内容や責任の違いも含めて教えていただけますか?

という聞き方でもいいでしょう。

厚生労働省も、いきなり経営者へ聞きにくい場合は、まず人事担当者などへ確認する方法を案内しています。多様な働き方の実現応援サイト

重要なのは、

「正社員はいくらもらっているんですか?」だけを聞くのではなく、自分との待遇差と、その理由を確認すること

です。

説明してもらえない場合は?

会社に質問しても、

「パートだから」

「会社の決まりだから」

「そういうものだから」

としか言われない。

あるいは、説明そのものを拒否される。

そんな場合には、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談する方法があります。

パートタイム・有期雇用労働法に関する紛争については、労働局による援助や調停の制度も用意されています。厚生労働省

相談したからといって、いきなり裁判になるわけではありません。

「自分の場合、この待遇差について会社へ説明を求められるのか」

という段階から相談することもできます。

人事・採用を経験して感じる「パートだから」という説明

私はこれまで、人事や採用、事業運営などに関わってきました。

その中で感じるのは、

雇用形態が、そのまま待遇差の説明になってしまうことがある

ということです。

「この人は正社員」

「この人はパート」

「この人は契約社員」

と区分していると、会社側もその違いを当たり前だと思ってしまいます。

しかし働いている本人からすると、

「仕事内容はほとんど同じなのに、なぜこんなに違うんだろう?」

という疑問が残ります。

もちろん、正社員とパートでは、実際に役割や責任、転勤の範囲などが違うケースもあります。

問題なのは、会社自身がその違いを説明できない状態です。

「パートだから」

ではなく、

「この仕事・責任・働き方の違いがあるので、この待遇差になっています」

と説明できるか。

働く側にとっても、そこを確認することが、自分の待遇を考える第一歩になると思います。

「同じ仕事なのに安い」と感じたら3つ確認してみる

まず、自分の仕事内容を整理します。

正社員と本当に同じなのか。

担当業務だけでなく、

責任。

部下の管理。

クレーム対応。

異動。

転勤。

将来の配置変更。

なども比べてみます。

次に、

何の待遇に差があるのか

を確認します。

基本給なのか。

賞与なのか。

退職金なのか。

家族手当なのか。

住宅手当なのか。

休暇なのか。

最後に、

「その差はなぜあるのか」を会社へ聞く。

この順番です。

「正社員と全く同じ金額をください」

から始める必要はありません。

まず、

自分の待遇がどう決まっているのかを知る。

それだけでもかなり違います。

2026年10月から「知らなかった」では終わらせない仕組みに

今回の改正で大きいのは、

正社員との待遇差について説明を求められることを、会社側から働く人へ明示するようになったことです。

そして同時に、

賞与。

退職手当。

家族手当。

住宅手当。

休暇。

福利厚生。

などについても、考え方がより具体的になりました。厚生労働省

今日報じられた茨城労働局の是正指導を見ると、制度があっても、労働条件の明示など基本的な部分で改善を求められる会社はまだあります。労働新聞社Webサイト

だからこそ、働く側も、

「会社がちゃんとしているはず」

だけで終わらせない方がいいでしょう。

給与明細を見る。

雇用契約書を見る。

正社員との待遇差に疑問があれば理由を聞く。

そして納得できない場合には外部の相談先を利用する。

「パートだから仕方ない」

と最初から諦める必要はありません。

一方で、

「正社員と仕事内容が少し同じだから、全部同じ待遇になる」

とも限りません。

大切なのは、

なぜ違うのかを知ること。

2026年10月の制度改正を、自分の給料や待遇について一度確認するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。


参考資料

・労働新聞「条件明示違反は12% パート有期法の指導状況 茨城労働局」(2026年10月19日)
・厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
・厚生労働省「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」
・厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
・厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」

※本記事は一般的な制度についての情報提供を目的としています。待遇差が不合理かどうかは、実際の仕事内容、責任、配置変更の範囲、待遇の目的などによって異なります。個別のケースについては、勤務先や都道府県労働局、専門家などへご確認ください。

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