最近、スマートフォンにこんな着信はありませんか?
「+1」
「+44」
「+800」
など、「+」から始まる見慣れない電話番号。
知らない海外の番号から何度も電話が来ると、
「どこで自分の電話番号を知ったんだろう?」
「もしかして個人情報が漏れている?」
と不安になる人もいると思います。
実際、2026年10月は個人情報の漏えいに関するニュースが相次いでいます。
ただし、最初に一つ注意しておきたいことがあります。
海外から電話が来たからといって、それだけで「個人情報が漏えいした」と判断することはできません。
一方で、氏名や電話番号、メールアドレスなどが流出すると、それらの情報が詐欺電話、SMS、フィッシング、不正ログインなどの「次の攻撃」に利用される可能性があります。
今回は、「個人情報が漏れたら実際に何が起きるのか」を、今月のニュースとあわせて考えてみます。
2026年10月、個人情報漏えいのニュースが相次いでいる
今月は、大規模な個人情報漏えいに関する発表が続いています。
10月8日、ローソンは「ローソンID」などへの第三者による不正アクセスがあり、ローソンIDについて215万5,345件の個人情報が漏えいしたと発表しました。
対象となる情報にはメールアドレスや氏名のほか、登録状況によって電話番号や住所なども含まれています。
ローソンは発表時点では、この件に起因すると考えられる不正利用や二次被害は確認されていないとしています。 ローソン
翌10月9日には、ブックオフグループホールディングスも、会員情報を管理するシステムへの不正アクセスを公表しました。
漏えいした可能性がある会員データは最大約643万件。
氏名、生年月日、性別、メールアドレス、電話番号、住所などが含まれる可能性があります。
そしてブックオフ自身が、取得された情報が悪用された場合、同社グループなどを装ったメール、SMS、電話が送られる可能性があるとして利用者に注意を呼び掛けています。 Eir Parts
企業から個人情報が漏れたとしても、それだけで直ちに金銭被害が起きるわけではありません。
怖いのは、その情報がその後どう使われるかです。
国も「大規模な漏えい」を受けて注意喚起
こうした状況を受け、個人情報保護委員会は10月7日、「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について」という注意喚起を公表しました。 個人情報保護委員会
さらに10月9日にはIPA(情報処理推進機構)も、国内の金融機関や通信事業者など幅広い事業者で、不正アクセスによる情報漏えいの公表が相次いでいるとして注意喚起しています。
IPAは特に、大量の個人情報を取り扱うオンラインサービスやアカウントサービスなどのシステムへ侵入し、個人情報を含むデータが盗まれる事案が相次いでいるとしています。 IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
つまり、「怪しいサイトに自分で個人情報を入力したから漏れた」というケースだけではありません。
普段利用している正規のサービスに登録していた情報が、外部からの攻撃によって盗まれる可能性もあります。
では、個人情報が盗まれると、その後何が起きるのでしょうか。
① 海外からの怪しい電話が増える可能性がある
まず考えられるのが、電話番号の悪用です。
警察庁によると、2025年中に特殊詐欺で利用された電話番号の約75.5%が国際電話番号でした。
「+1」や「+44」などから始まる番号から電話がかかってきた場合には注意するよう呼び掛けています。 警察庁
ここで、
「最近海外から電話が来るようになったから、どこかから情報が漏れたんだ」
と考えたくなります。
しかし、そこまで断定することはできません。
電話番号を機械的・無作為に発信している可能性もあります。
一方で、今回のブックオフの発表のように、漏えいした可能性のある情報に電話番号が含まれ、企業自身が「悪用された場合、電話などが送られる可能性がある」と注意喚起するケースもあります。
つまり、
海外から電話が来た=情報漏えい
ではありません。
しかし、
流出した電話番号が詐欺や迷惑電話に利用される可能性はある
ということです。
② 名前を知っている詐欺電話が来る可能性もある
知らない番号から電話が来て、
「山田さんでしょうか?」
と突然自分の名前を言われたらどうでしょうか。
何も知らない相手より、少し信用してしまう人もいると思います。
さらに、
「○○というサービスを利用されていますよね」
「東京都にお住まいですよね」
など、自分しか知らないと思っていた情報まで言われれば、
「本物の会社かもしれない」
と思ってしまう可能性があります。
個人情報漏えいで本当に怖いのは、住所や名前を知られることだけではありません。
盗まれた情報が、相手を信用させるための材料になることです。
③ 詐欺メールやSMSが本物らしくなる
メールアドレスや電話番号が漏れれば、フィッシングメールやSMSに利用される可能性があります。
たとえば、
「クレジットカードが利用停止になります」
「アカウントに異常があります」
「料金が未納になっています」
「本人確認をしてください」
などとしてURLをクリックさせ、偽のサイトへ誘導します。
IPAによると、2026年4~6月にはフィッシングに関する相談が146件寄せられ、前四半期から約5%増加しました。
実際に偽サイトへアクセスし、個人情報やクレジットカード情報を入力してしまったという相談も寄せられています。 IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
単なる迷惑メールなら気付けても、
「○○様」
と自分の名前が入っていたり、実際に利用しているサービスを名乗られたりすれば、見分ける難易度は上がります。
④ SNSや通販サイトに不正ログインされる
もしIDやパスワードなどの認証情報まで知られれば、不正ログインにつながる可能性があります。
特に注意したいのが、パスワードの使い回しです。
たとえば、ある通販サイトで、
メールアドレス
+
パスワード
の組み合わせが知られてしまったとします。
同じ組み合わせを、
SNS
メール
別の通販サイト
その他のサービス
でも使っていれば、攻撃する側は同じ情報を別のサイトでも試すことができます。
IPAによると、2026年4~6月の「不正ログイン」に関する相談は423件。
FacebookやInstagramなどへ不正ログインされ、本人がログインできなくなったという相談も多く寄せられています。 IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
⑤ SNSを乗っ取られ、家族や友人まで狙われる
SNSアカウントを乗っ取られると、自分だけの問題ではなくなることがあります。
本人になりすまし、
「急にお金が必要になった」
「この商品を買ってほしい」
「このURLから投票して」
などと知人へメッセージを送ることもできます。
受け取った側からすれば、知らない人から届いたメッセージではありません。
普段やり取りをしている家族や友人のアカウントから届いています。
そのため、信用してしまう可能性があります。
個人情報の流出は、本人だけでなく、その周囲まで巻き込む可能性があります。
⑥ 「警察です」と言われても信用してはいけない
さらに最近注意したいのが、警察官などを名乗る詐欺です。
2026年8月末までの特殊詐欺について、警察庁は認知件数2万9,687件、被害額2,360.7億円と公表しています。
そのうち「ニセ警察詐欺」は6,346件、被害額は728.6億円に上っています。 警察庁
突然、
「あなた名義の口座が犯罪に使われています」
「あなたも捜査対象になっています」
などと言われたら、多くの人は焦ると思います。
さらに相手が自分の名前や住所、生年月日などを知っていたら、
「本当に警察なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、
自分の個人情報を知っている=信用できる相手
ではありません。
むしろ、流出した個人情報を知っているからこそ、本物らしい詐欺ができる可能性があります。
人事・採用を経験して感じる「履歴書は個人情報の塊」
私はこれまで、人事・採用や事業運営に関わってきました。
その視点から考えると、今回の問題はIT部門だけの話ではありません。
特に採用担当者が扱う履歴書や応募情報には、
氏名
住所
電話番号
メールアドレス
生年月日
顔写真
学歴
職歴
など、多くの個人情報が含まれています。
採用担当者にとっては毎日のように見る書類でも、応募者からすれば、自分の人生に関する情報をまとめた非常に重要なデータです。
だから企業側も、
「履歴書を誰が見られるのか」
「不採用者のデータをいつまで残しているのか」
「個人のPCやUSBへ保存していないか」
「退職した採用担当者がアクセスできる状態になっていないか」
「求人サービスからダウンロードした応募者情報をどう管理しているか」
などを改めて確認する必要があります。
セキュリティというと、
「ウイルス対策ソフトを入れる」
「システム部門が対応する」
というイメージになりがちです。
しかし、人事、採用、総務、営業なども大量の個人情報を扱っています。
個人情報管理は、一部の部署だけの問題ではありません。
海外から電話が増えたら、まず何をすればいい?
「最近、知らない海外番号から電話が増えた」
そんなときに、すぐ電話番号を変更する必要があるとは限りません。
まずは基本的な対策を確認しましょう。
知らない国際電話には出ない
「+」から始まる知らない番号には注意します。
必要のない国際電話については、着信拒否設定などを利用する方法もあります。
電話で個人情報を伝えない
相手が、
「警察です」
「銀行です」
「携帯電話会社です」
と言っても、その電話の中で暗証番号、パスワード、認証コードなどを伝えないことが重要です。
一度電話を切り、自分で公式サイトなどから電話番号を調べて確認します。
パスワードを使い回さない
特にメールアドレスとパスワードを複数サービスで使い回している場合は見直しましょう。
一つのサービスから情報が漏れた場合でも、別サービスへの被害を防ぎやすくなります。
多要素認証を設定する
パスワードだけでログインするのではなく、SMS、認証アプリ、生体認証などを組み合わせる多要素認証も重要です。
カードや銀行の履歴を確認する
身に覚えのない決済や送金がないか確認します。
異常があれば、カード会社や金融機関へ早めに連絡します。
メールやSMSのURLをすぐ開かない
「今すぐ確認してください」
「24時間以内にアカウントを停止します」
など、不安をあおる文章ほど、一度立ち止まることが大切です。
「漏れないようにする」だけでは足りない
個人情報を一切外へ出さずに生活することは、今ではほぼ不可能です。
通販を使う。
スマートフォンを契約する。
銀行口座を作る。
転職サイトへ登録する。
病院へ行く。
さまざまな場面で、私たちは個人情報を預けています。
そして今回のように、本人に落ち度がなくても、利用しているサービスが攻撃を受ける可能性があります。
だからこそ、
「絶対に個人情報を漏らさない」だけでなく、「もし漏れても次の被害を防げるようにする」
という考え方が必要なのではないでしょうか。
パスワードを使い回さない。
多要素認証を利用する。
知らない電話には出ない。
怪しいURLは開かない。
相手が自分の名前を知っていても、すぐ信用しない。
どれも難しい対策ではありません。
しかし、個人情報が盗まれた「その後」の被害を防ぐには重要です。
最近、
「海外からの電話が増えた」
「知らないSMSが増えた」
「パスワードリセットのメールが届いた」
など、普段と違うことが起きたら、
「気のせい」で終わらせず、一度自分のアカウントやセキュリティを確認してみる。
2026年10月に相次いでいる情報漏えいのニュースを、自分の情報管理を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
・個人情報保護委員会「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」2026年10月7日
・IPA「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」2026年10月9日
・株式会社ローソン「第三者による不正アクセスに伴う個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」2026年10月8日
・ブックオフグループホールディングス株式会社「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」2026年10月9日
・IPA「情報セキュリティ安心相談窓口の相談状況 2026年第2四半期」
・警察庁「みんなでとめよう!!国際電話詐欺」
・警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」
※本記事は一般的な情報セキュリティに関する情報提供を目的としています。不正利用など実際の被害が確認された場合には、利用サービス、金融機関、カード会社、警察などへ速やかにご相談ください。


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